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11月4日付 秋田魁新報 がん教育について2017.11.05 Sunday
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中高生へのがん教育は、これまで厚生労働省が「がん対策推進基本計画」(2012〜16年度)に基づき行ってきましたが、年度からは文部科学省が全国で実施しています。県内では、県が11年度からがん対策室を設置し、教育庁やがん患者団体、医師会と連携しながら進めてきました。医師による講義、がん経験者の談話、生徒の能動的学習による本県のがん教育は、厚労省のがん対策緩和ケア関連会議で高い評価を受けました。
本年度は能代市、横手市、湯沢市、八郎潟町の中学8校と秋田西高、御所野学院高の2校で「がん教室」を開き、計1100人の生徒が参加する予定です。
がん教育では「がんを正しく理解する」「健康と命の大切さを主体的に考える」を目指しています。中高生ががんに関して基本的で正しい知識を得ることは、自分の生命を考えることにつながり、家族や社会への影響も大きいと実感しています。
先日、抗がん治療が一段落した患者さんを診ました。高校生の娘さんが、患者である母親の体調の変化や、脱毛などを冷静に受け止めていたようだと教えてくれました。娘さんは中学校時代にがん教育を受けたことがあったようです。
娘さんは「治療が終わればまた生えてくるね」などと言って、母親の体調が悪い時は家事を積極的に手伝ってくれたそうです。
患者さんは「子どものおかげでどんなに気持ちが救われたか分からない」と話していました。また、家事などを元通りできるようになると、娘さんは「部活が忙しくなって帰りが遅く、家事をあまり手伝ってくれなくなった」と笑っていました。
このほか、高校生の子どもから「がん検診を受けるように」と言われて来ましたという親御さんも増えました。中高生は大人よりがんの知識をしっかり持っているようです。
一方、大人が子どもに対して害を与えているのが喫煙です。受動喫煙は、周囲にいる家族にも発がんのリスクを高め、気管支ぜんそく発症などへの影響も少なくありません。換気扇の下やベランダで喫煙することも、家族や周囲に迷惑をかけていることを認識してほしいと思います。大人へのがん教育はもっと必要なのかもしれません。
私は11月9日、がん教室で八郎潟町の八郎潟中を訪問します。今年も中学生に会うことを楽しみにしています。
(はしづめ・たかひろ はしづめクリニック院長、秋田市)
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